スレート・オート、ワルシャワの空き工場でEV生産を開始へ — 2026年末に納車予定

スレート・オート、ワルシャワの空き工場でEV生産を開始へ — 2026年末に納車予定

アメリカのスタートアップ企業「スレート・オート(Slate Auto)」は、ポーランド・ワルシャワにある使われていない工場を活用し、電気自動車(EV)の量産を開始する計画を発表しました。同社は、手頃な価格で購入できるEVを直接消費者に届けるビジネスモデルを掲げており、2026年末までに最初の車両を出荷する方針です。この取り組みにより、地域では2,000人以上の新規雇用が創出される見通しです。

EV市場の常識を覆す「25,000ドルの電動ピックアップ」

スレート・オートが提供する初の量産モデルは、フルカスタマイズ可能な電動ピックアップトラックで、販売価格はわずか2万5,000ドル(約390万円)に設定されています。これは現在の主流EVに比べて大幅に低価格であり、多くの消費者にとって魅力的な選択肢となりそうです。

このピックアップは、最小限の設計をベースとしながらも、ユーザーが必要に応じて機能を拡張できるモジュラー構造が採用されています。例えば、長距離ドライブに対応したバッテリーモジュールや、オフロード用のタイヤ、荷台拡張パーツなど、ライフスタイルに合わせた構成が可能です。

すでに10万件を超える予約が世界中から寄せられており、50ドルの返金可能な予約金が必要ですが、その手頃さとユニークなデザインから高い注目を集めています。

ポーランド生産の理由と、地域経済へのインパクト

同社がポーランドを生産拠点に選んだ理由の一つは、ヨーロッパ市場へのアクセスの良さにあります。EU加盟国であるポーランドは、物流インフラが整っており、自動車産業の人材も豊富です。また、ワルシャワの工場はかつて大手メーカーが使用していた施設であり、その再利用により初期投資を抑えることができます。

地元政府もこのプロジェクトを積極的に支援しており、雇用創出や産業再生への期待が高まっています。すでに技術者、ライン作業者、マネージャー職など、さまざまな職種で採用活動が始まっており、地域社会にとっても大きな追い風となりそうです。

EVの民主化を目指す、スレート・オートの哲学

スレート・オートのビジョンは、電気自動車を一部の高所得者だけでなく、誰もが手の届く存在にすることです。創業者は「EV市場には、複雑なシステムと高価な価格設定が蔓延している。我々は、それを変える」と語っており、環境負荷の低い移動手段をより広範な層に届けることを使命としています。

このような哲学は、これまでテスラや他の大手メーカーが手を出してこなかった「シンプルで安価なEV」というニッチな市場に対する明確な戦略です。特に新興市場や、商用車両としてのニーズが高い地域では大きな可能性を秘めています。

アメリカとヨーロッパの連携強化へ

ミシガン州の本社でも組織体制の強化が進んでおり、開発、設計、サプライチェーンの各部門で新たな人材の採用が活発化しています。米国本社とポーランド工場の間で技術と資材の連携を強化することで、品質と生産スピードの最適化を図る構えです。

今後、同社はさらに他国での生産拠点の可能性も視野に入れており、将来的にはアジア市場への参入も検討していると報じられています。

今後の展望

計画通りに進行すれば、スレート・オートの電動ピックアップは2026年末に市場へと登場します。自動車業界では、低価格帯のEVの成否が新たな競争軸となっており、スレート・オートの動向は注視されています。

大量生産が開始されれば、EV市場の構造に変革をもたらす可能性もあり、業界全体にとっても大きな影響力を持つ存在となるかもしれません。

スレート・オートの挑戦が成功するかどうかは、今後の製造体制や供給網の整備にかかっていますが、現時点ではその一歩一歩が着実に進んでいるようです。