F1復帰は「現時点では考えていない」
BMWが最後にF1へ参戦したのは16年前、ザウバーとのジョイントチームとしてだった。しかし、その復帰が近い将来に実現する可能性は極めて低いようだ。
先週末に行われたニュルブルクリンク24時間レースで優勝を果たしたBMW。その直前、BMW Mモータースポーツの責任者アンドレアス・ロース氏は、イギリスの自動車メディア「Top Gear」の取材に対してこう語った。
「我々にとって、レース車両と市販車の間に“道との関連性”があることが重要です。現在のF1のレギュレーションにはそうした関連性が見当たらないため、現段階ではWECやIMSAでのハイパーカー参戦の方が理にかなっています」
レースを通じた市販車開発への貢献
BMWは長年にわたり、レース技術を市販モデルへとフィードバックするという理念を掲げてきた。1970年代の「M1 プロカー」時代から続くその方針は、現在のモータースポーツ活動にも脈々と受け継がれている。
「モータースポーツは、我々にとって最もスポーティな市販車をテストするための“実験室”です。だからこそ、ピラミッド型のレース体系が重要なのです」とロース氏。
彼は続けて、BMWがエントリーレベルの「M2レーシング」からGT4、そしてハイパーカーへとステップアップできる体制を整えていることを強調。また、ハイパーカーである「M ハイブリッド V8」は、市販のM5やXMと同じ系統のエンジンを搭載しており、完全に同一ではないものの両者の開発には明確な連携があると述べた。
カーボンファイバーから自然素材へ転換
BMWは現在、市販モデルやレース車両に多用してきたカーボンファイバーの使用を見直し、新たな自然由来の素材へと移行する方針を明らかにしている。
この素材は、亜麻(フラックス)をベースとした複合材で、スイスのクリーンテック企業「Bcomp」との共同開発により誕生。2019年からはFormula E車両に試験的に導入され、その後はM4 DTMやM4 GT4でも実績を積んできた。
量産準備が完了、CO2排出も大幅削減
BMWは、この亜麻ベースの新素材について「量産レベルに達した」と正式に発表。カーボンファイバーの代替として、今後のMモデルに順次採用していくという。
同社の試算によると、例えばカーボン製ルーフパネルをこの新素材に置き換えることで、製造過程におけるCO2e排出量を約40%削減できるという。また、EUで提案されている「カーボンファイバーの有害物質指定」に対しても、この代替素材を用いることで影響を回避できる可能性がある。
ニュルブルクリンク24時間レースでの成果
この新素材の性能は、既にレース現場でも証明されつつある。先週末に行われたニュルブルクリンク24時間レースのSP10クラスでは、「M4 GT4 EVO」がクラス優勝を達成。持続可能性と高性能を両立するBMWの取り組みは、今後ますます注目を集めそうだ。